久しぶりの更新ですみません
今回は本の感想でいきたいと思います
本当に素晴らしい短篇小説を二冊選べと言われたら、一冊は下記です
もう一冊を選べと言われたら、私は迷わずこちらを選びます
ベルンハルト・シュリンクは『朗読者』がベストセラーになったことで有名かもしれません
この小説も個人的には嫌いではなかったのですが、後半は少しだれてしまった記憶があります
前半部分での物語の引き込み方は素晴らしかったということもあり、この作家は長編よりも短篇に力を発揮するのかもしれないと思いました
『逃げてゆく愛 (新潮文庫)』はもともと新潮クレストブックから出ていたのですが、が文庫にもなっています
すでに絶版になっておりますが・・・
これは全7編の短編集です
私はいろいろな短編集をよく買うのですが、あまり面白くなければ最初の数編でやめてしまいます
短篇というのは、私の中では明らかに相性があり、数編読んでダメならずっとダメということが多いのです
ですので、短編の読み始めはすごく集中しながら良さを探します
そうしなくては、その後に続く作品を読めなくなってしまうので・・・
結果から言えば、全てを読みました
最初の一作がすごく良かったので、気分の乗った日だけ寝る前に一作ずつ読んでいくことにしました
この作家は、それほど難しい言葉を使ってないですし、ややこしい言い回しもしません
にも関わらず、集中しなくては物語を見失ってしまう
不思議な短編集でした
このような味の短編を書く作家は二人といないような気がしました
ちなみに短篇というものは同じ作者の作品が続くわけなので、何作も読んでいくうちに何となく飽きてくるという場合もあります
ですが、『逃げてゆく愛 』にはそういうことが起こりません
シチュエーションが絶妙に設定されているのです
久々の偏愛度ランキングにいきたいと思います!
『甘豌豆』
いつまでも頭の中でじーんとこの男の生涯が残っています
短編なのに長編の味わいとはよく聞きますが、これもまさしくそれです
一人の男が妻の他に二人と関係を持ち、そのまま途方もない時間が流れます
そして男は全てを捨てて旅に出るのですが、不運なことに事故が起きてしまいます
彼を待ち受けているのは三人の女でした
『ガソリンスタンドの女』
これは久々にガツンとやられました
でも、それだけではなく余韻も残します
男はある夢をよく見ていました
それもかなり長い歳月、同じ夢でした
妻との旅行中、その夢の光景が現実に出てきます
夢に出てくる女とは関係を持つことになるのですが、この男が現実にとった対応は?
『もう一人の男』
これが最初の短編です
もしこの短編があまり面白くなければ、このブログ自体書いていなかったかもしれません
亡くなった妻の元へ一通の手紙がきます
その手紙の主は妻が死んだことを知りません
男はその手紙の主と知り合いになり、妻との関係を暴こうとします
ただのサスペンスではなく、男たちの悲哀が滲んでいます
どの短編も男が主人公になっています
そしてどの男にも共通した情けなさに共感すべきところがありました
私が言うのもナンですが、たまに人は愛に苦しむことがあります
今そういう状況の人でしたら、何か救われるものがあるかもしれません
こちらは久しぶりに出たベルンハルト・シュリンクの新作短編集です。いつ絶版になるか分からないので、書店に急ぎましょう!