職業作家への道

自分の文章で生活できるなんて素敵。普通の会社員が全力で小説家を目指します

北陸への出張旅⑦

 

 

前回の第六回は下記になります

 

 

towriter.hatenablog.com

 

 

富山での仕事を終わらせたら、新幹線で金沢へ向かい、次はすぐ福井に行かなくてはならない

 

 

仕事を早く切り上げて金沢を少し歩いてもいいのかもしれないが、前に一度来たことがあるし、とてつもない大雨だったからすぐに福井へ移動することにした

 

 

富山から金沢は20分だし、金沢から福井は40分である

 

 

もっと遠いものだと思っていた

 

 

福井につき、まずは永平寺に向かうことにした

 

 

本来は三日目に行くことにしていたが、思った以上に仕事が前倒しになってここまできている

 

 

ちなみに前倒しできているのは、仕事をとてつもないスピードでこなしているからである

 

 

なぜ、それほど急いでいるのかと言えば、何が何でも観光をしたいという高い志が僕にはあるからである

 

 

時間があまりないから駅ナカの立ち食いそばを食べて、すぐさま永平寺行きのバスに乗った

 

 

気づけば連続で立ち食いそばである

 

 

味は福井の勝ちだと思われる

 

 

いずれにしても、そばの食べ過ぎで胸にこみ上げてくるものがある

 

 

それともまだ富山ブラックの名残りか。おそるべし・・・

 

 

永平寺行きのバスに揺られていると、じょじょに山が深くなり雨のためか空も暗くなり、なんだかこの世のあの世の間の道を行っているような怖さがあった

 

 

それだけ厳粛な雰囲気があるような気がした

 

 

確か臨済宗の総本山だったはずで、開祖はこの山道を歩きながら他とは違う神聖な何かを感じたに違いない

 

 

もし僕が一人で修行していて、神聖な場所を選べと言われたら確かにここにするかな、などと考えたりしてしまうくらいに異世界な雰囲気だ

 

 

まあ、そんなことを考えても何の意味もありませんが

 

 

だが、その神聖な道程とは裏腹に、バス降り場は俗物化している

 

 

バスを降りたとたんお土産物屋の5%オフ券をちょうだいした

 

 

その後も歩いていると勧誘されながらお土産物屋さんの人からトイレ使っていいよとか勧誘されて、あの世の永平寺開祖も驚きでしょう

 

 

直前まではそんないい加減なことを考えていたものの、土産物屋を過ぎていよいよ入り口に来ると襟を正されるような気分になる

 

 

かつて僕は新潮文庫から出ている『食う寝る坐る永平寺修行記 (新潮文庫)』という本を読んで、その修行のしんどさは並ではないことは知っていた

 

 

だから通り過ぎていくお坊さん一人一人になんだかご苦労なことだと頭を下げたい気分だった

 

 

永平寺の参拝は基本的に全て屋内で済ますことができる

 

 

そういう意味では天候に左右されない極めて稀な観光地というか、神聖な場所である

 

 

ただし屋内だからと言ってあなどるなかれ

 

 

ゆっくりまわったら一時間はかかる

 

 

どの建物もどの部屋も見どころがあり、深い歴史を感じさせる

 

 

かなりの観光客であふれているが、空間空間によっては、何かが重々しく、誰もが口をつぐんでしまう

 

 

どういう位置づけの建物なのかもさっぱり分からないが、なんだか神聖さだけは感じてしまうのだ

 

 

どれだけ仲のいい人同士でも気楽に口を開くことはできない

 

 

今日の晩御飯なに食べようか、そんなことを言える雰囲気ではない

 

 

たくさんの人が僕を追い抜き、僕もたくさんの人を追い越した

 

 

そんな中で偶然にもずっと僕と同じ歩調で歩んでいる二人組がいた

 

 

中年の男性とそれより少し若い女性である

 

 

憶測とはいえ、僕はこの二人を不倫だと看破した

 

 

というのも、僕が近くにいると黙っていて、遠くにいるとよく喋っている

 

 

それなりの年齢でもあるし、ひっそりとした場所では急に手をつないだりしている

 

 

恋人なら堂々とすればいい

 

 

夫婦なら手はつながないだろう(偏見)

 

 

ちなみに、不倫かどうかを見極めるコツは、どれだけ会話が弾んでいるかを見るという方法があるらしい

 

 

本当の夫婦だったらあまり会話がないということだった

 

 

その点から見てもこの二人は不倫か、もしくは新婚ほやほやの可能性もある

 

 

僕は一定の距離をとりつつ、この二人の動きを凝視していた

 

 

男の方が多少は永平寺に興味がありそうだが、女性の方は早く二人っきりになりたそうな気配がある

 

 

男はうんちくを言っていて、女子は頷いているがそんなうんちくには全く興味がないことが分かる

 

 

僕は一体永平寺で何をやっているのか

 

 

この後は仕事がある

 

 

不倫観察などそうそうに切り上げて、二人の恋路を邪魔せずに去る必要があった

 

 

帰りは少しお土産を見たりしてバスに乗った

 

 

バスに乗ったらすぐに眠っていて、起きたら駅についていた

 

 

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