現代で有名な作家だからといって、後世に歴史を残すとは限らないようです
現に、近代ヨーロッパにはたくさんの有名作家が現在も名を残していますが、当時はもっと人気の作家がいた、なんて話をよく聞きます
後世に名を残すか否かは、その時代のと人気と比例関係というわけでもないようです
ちなみに、末永く後世に名を残す作家を一人挙げるとしたら、誰を推挙されますでしょうか?非常に興味深いのでウェブ上でアンケートを取りたいところですが、私にはそんなテクニックがなくて残念です
ちなみに、歴史に残る現代作家を一人挙げるならば、私は問答無用でジュンパ・ラヒリを推したいと思います
以前も、このブログで紹介させていただいたかと思いますが、改めて紹介させていただきます
ジュンパ・ラヒリはインド系イギリス生まれの女性作家です
インドにはほとんど住んだことがないとのことです
『停電の夜に』は短編集で、どれも素晴らしい出来なのですが、私の偏愛度ランキングをまたやってみたいと思います
1位:三度目で最後の大陸
2位:ピルザダさんが食事に来たころ
3位:停電の夜に
1位は文句なしです
もしアンケートを取ったとしたら、皆さんもこの作品を選ばれるのではないでしょうか
未来を求めてインドからイギリスに渡り、アメリカに渡る青年の話です
この物語は軸が三つあります。月面到達・大家のおばちゃん・インドから来た妻
最後はこれらが混ざり合って強烈に美しい文章が出来上がります
おそらく日本語で50回、英語で10回は読み返しました
2位のピルザダさんが食事に来たころを読むと、遠い親戚に会った時のような感情を思い出すのではないでしょうか
主人公は小さな女の子です
ある時からピルザダが家を出入りするようになります
ピルザダさんはパキスタンの内戦に巻き込まれたために来ました
いつの頃からかピルザダさんは家に来なくなり母国へ帰ることになります
ただそれだけの話なのですが、気に入ってしまったのは、小さな頃親戚に会った時、親近感のような抵抗感のような複雑な気持ちが湧いたのを思い出したからかもしれません
3位は表題作です
働く女と勉強する男という夫婦。彼らの生活の表面だけなぞるように描かれます
ある時、臨時の知らせとして、定期的な停電の連絡が彼らの家に入ります
停電のため暗闇で過ごすことになるのですが、その中で夫婦は互いに一つずつ秘密を打ち明け合うという話です
いつの間にかすれ違っている夫婦間は言葉にできないものなのかもしれません
ラヒリは直接的な言葉にはせず、その夫婦のやりとりを丁寧に書いていきます
生活の細やかな描写を前面に押し出しながら、個人の感情を揺り動かしてしまう何かが表現されます
それは戦争であったり、依存している家族であったり、自分とはという問題であったりするのかもしれません
この作品が世に出たとき、もっとこの作者の本が読みたくて読みたくて、アメリカですでに発売されていた『The Namesake (English Edition)』を買ってしまいました
英語の長編小説はやはり難しすぎて残念ながら読破は出来ませんでしたが、邦訳の『
その名にちなんで (新潮クレスト・ブックス)』を発売日と同時に買いました
ジュンパ・ラヒリでインド系の作家に注目するようになり、同じ新潮クレスト・ブックの『グアヴァ園は大騒ぎ (新潮クレスト・ブックス)』も読みましたが、これも悪くないです
インドという遠い土地で違う生活環境でも、日本やその他の国々では、同じように日々をすごす人々がいます
当たり前のことですが、彼女の作品を読むと改めてそのことに気付かされます
一時期、南米文学が世界を席巻しましたが、いつかインド文学の時代が来る日があるかもしれません
新潮社よ、、、なぜKindle版を出してくれないのです!!!