ここのところ、あまり紙の本を買わなくなってきております
いくつか理由があると思っていますが、電子書籍を抜きに語ることはできません
最近の書籍は、紙と電子を同時に発売します
そこで私は苦悶してしまうのです
紙と電子のどちらを買うべきだろうか、と
これは毎回本当に悩みます
それで、紙の本屋さんでは決断できずに、家に帰ってきて電子書籍を買おうか検討するのですが、そこでも決着がつかずに眠ることにします
翌日になると、購買意欲はかなり減っていて、仕事をしたりするうちに忘れてしまいます
結局、そうやって毎日を過ごすうちに、まあいいかなぁと思って、買わなくなってしまうのです
つまり、電子書籍の台頭によって、私は紙も電子も買わないという選択肢が生まれてしまっているのです
もし紙のみだったら買っていたケースは多々あったかと思います
そんな厳しい消費者になってしまった私ですが、それでも迷いなく紙で買ってしまう本もあります
それが今回購入した『地上に星座をつくる』です
これは紀行文と言って差し支えないでしょう
私は恥ずかしながらこの著者のことを全く知りませんでした
ですが、新潮文庫からの新刊の紀行文ということでさっと手に持ってみて、紹介文と出だしの文章、そしてぱらぱらと文体を眺めてみながら、これは買わなければならないなと思いました
というのも、文章から何か気品のようなものが漂ってきたのです(大げさ?)
それは沢木耕太郎さんにも通じるものがあったかもしれません
その他にも魅力的な文庫の新刊は何冊もあったのですが、私は迷いもなくこの本を手に取りました
値段を見ると800円(税別)とあります
なんか、文庫も高くなったなぁと思いながらもレジへと持っていきました
かつてはこれくらいの厚さでも600円とかだったような記憶があります
著者である石川さんはどうやら登山家のようなのですが、普通の旅もしています
国内も山形や北海道、沖縄へ行くかと思えば、海外にも行きます
インドやヒマラヤ、ベトナム、カナダ、フランスとバラエティに富んでいます
本格的な登山の描写があるかと思えば、国内の知り合いのところに行ったり、自分のお気に入りの場所だったり、生活の延長の場所だったりします
細切れの短編のような旅行記で、忙しい人でも小刻みに読むことができます
なかなか普通の人では見ることのできない景色を見ていたり、経験をしたりしているので、穏やかそうな作者ですが、なかなかに激しい内容だったりします
この方はいろいろなことをとりあえず試してみるという性癖があるようです
例えば用を足した後に、バングラデシュの環境でやむをえず紙ではなく手で尻を吹くことになるものの、著者は本当に不衛生なのはどちらなのだろうという疑問が湧いたりします
もちろん、日本人の私たちからすると、手で拭くという行為はありえませんが、確かに紙よりも自分の手の方がきれいに拭えることができるような気がします
そうやって、この本は今生活している場所の現実感や、私たちの常識を少しずつはがしてくれます
忙しい毎日を送っている方にぜひおすすめさせていただきたい本だと感じました
やはりキンドルでも出版されていますが、この本は紙の書籍一択のような気がしました。ですが、それは好みの問題ですね。どちらでも結構だと思います。日常が少しごちゃごちゃしてしまっていれば、少し違う視点が与えられるかもしれません