職業作家への道

自分の文章で生活できるなんて素敵。普通の会社員が全力で小説家を目指します

『空白の五マイル』角幡唯介

 

 

 

最近はあまりテレビを見なくなっていたのですが、たまたまテレビを点けた時に、『スイッチインタビュー』という番組がやっていて、そこに探検家の作家と紹介されている角幡唯介という方がいました

 

 

 

www.nhk.jp

 

 

 

私はその方を存じ上げなかったのですが、静かなのですが熱を持った話し方がひどく印象に残りました

 

 

 

この人は誰なのだろうと思って調べてみると、早稲田の探検部のようでした

 

 

 

早稲田の探検部といえば、以前もご紹介したことがある高野秀行が有名ですが、角幡唯介はまた少し違った味わいの人物のようでした

 

 

 

towriter.hatenablog.com

 

 

 

高野秀行が遊び心満載の冒険家だとしたら、角幡唯介はシリアスな冒険家ということができるかもしれません

 

 

本屋さんに行き、この著者の本をいろいろと調べてみると意外とたくさん出版されています

 

 

 

が、私は開高健ノンフィクション賞の『空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む 』を最初に読むことにしました

 

 

 

結論から言うと、ものすごく面白い本で、かつこの著者の人生に対する向き合い方に共感を覚えて、もっと他の本も読んでみたくなりました

 

 

 

ツアンポー峡谷というのは冒険家でも行くのに難易度の高い場所であり、その中に前人未到の空白の五マイルという場所があります

 

 

 

著者はその場所に憧れていつか制覇したいと夢見るようになります

 

 

 

大学生から社会人になりますが、それでもこの場所に行きたいという思いを捨てきれず、運よく入れた新聞社を辞めて、旅に出るという話です

 

 

 

読んでいると冒険をしているようにわくわくするというのも醍醐味なのですが、私は会社を辞めて旅に出るとか、そういう類いの本が大好きなのであります

 

 

 

私は冒険家の気持ちをうまく理解することができません

 

 

 

こんな過酷な場所に行きたいと思いませんし、死と隣接したような日々を過ごすのはおそろしいです

 

 

 

ですから、本当の意味で彼がなぜ冒険に出るのか、本書を読んで分かったようでいて、たぶん私は分かっていないと思います

 

 

 

かつ、この場所ではかつて亡くなっている日本人の方もいらっしゃいます

 

 

 

にも関わらず、この場所に挑みたくて、その思いが頭を離れないという著者の魂に共感してしまいます

 

 

 

テレビで拝見した時に感じた熱のようなものを、やはりこの本からも同じように感じたのです

 

 

これは私の仮説ではありますが、多くの人は日常に向き合った時たいてい「まあ、こんなもんだよな」と妥協します

 

 

 

その妥協は構造的で、あらゆる場面、あらゆるタイミング、あらゆる心境で、無意識のうちに自らを納得させています

 

 

それだけ延々と繰り返している作業なので、それが自分の希望なのか、何かを押し殺しているのか、そもそも一体何が自分の中で起きているのか、分からなくなっています

 

 

 

ですが、たまにとてつもなく強い意志で、「それでは駄目だ、絶対に駄目なんだ」と妥協を許さない姿勢を持った人がいます

 

 

 

おそらく角幡氏というのは、そういう人物なのではないかと思いました

 

 

 

そして、私は自分がそこまで強いものを持った人間ではないので、彼の書いた本を読みながら疑似体験をすることしかできません

 

 

 

ですが、一方で少しほっとする部分もあります

 

 

 

角幡氏はとても強運で、幾度の旅の危機も乗り越えていきます

 

 

 

もし私に妥協を許さない強さを持っていて、ツアンポー峡谷に行っていたら今ごろ死んでいる、そんな気がしました

 

 

 

 

 

次に読むのは『雪男は向こうからやって来た』と決めています。どう思いますか、このタイトル。面白くないはずがありません。読んだらまたレビューいたしますので、お越しくださいませ!

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