作家になる前、もしくは作家になりたての時、多くの人は長い文章は書けないと思います
もちろん、これは一般論です
とてつもない才能の方はそんなことはないのかもしれませんし、単に長くなるか短くなるかは気質の問題ということなのかもしれません
ただ、私が知っている偉大な作家でも、やはり出だしの時は本当に短い小説で、長い年月書いていくうちに長編に取り組みだしているという印象があります
ちなみに、過去にこんな記事を書いておりましたので、ご参考までに・・・
他にもそういう作家は多いと思いますが、デビュー後しか知らないので、最初から長編を引っ提げた作家の方も、実は若いときにこっそりと短いものをいろいろと書いていたのではないか、と邪推したりします
今回ご紹介するこの短編小説集『ここから世界が始まる』は、未刊行のものもあるということなので、おそらく生前は封印されていた(していた)作品集なのだと思います
どの短編もとても短いもので、原稿用紙でしたら10-20枚くらいでしょうか
一編でしたら、すぐに読むことができます
これらは全てカポーティが十代の時に書いたものらしく、最初に書いたのはなんと十一歳ということです
あの三島由紀夫でも最初に書いたのは十三歳ということでした
それでも、この短編集には少年とか青年とは思えぬほどの観察眼と洞察を兼ね備えていて、自覚的に成長していけばとんでもない大家になるという予想はできます(結果論かもしれませんが・・・)
十代とは思えぬシチュエーションを次々登場させて、人生のなんとも言えぬ一瞬のようなものを確実に切り取っていきます
私が理解できていないだけかもしれませんが、やはり荒削りといいますか、少しシンプル過ぎるものもあるように思いますが、それでもとんでもないクオリティです
本当にどれも素晴らしかったのですが、『水車場の店』とか、こんな話を書けますでしょうか
実話の部分もあるのでしょうけれども、とてつもない想像力が働かされた感じがしました
あとは『ミス・ベル・ランキン』が印象に残っています
特に最後の一文は、十代のものとは思えぬ、大家でもたまにしか生まれない切れ味鋭い短編です
身構えて読むには物足りないかもしれませんが、作家を志す方で特に若い方は読んでみられるといいと思います
さらに十代の方でしたら、負けてなるものかと執筆意欲も増すかもしれません
私はもうとっくに十代ではないですが、それでもいい短編が書きたくなる、、、そんな本でした
なんとなく、Kindleより本の方がお勧めですかね
薄くて文庫なので持ち運びも問題ありませんし!
この本に影響されたのか、次回にでもまた自選短編をアップしようと思います。誰も楽しみではないような気がしますが、お時間ありましたらお読みいただけますと嬉しいです