職業作家への道

自分の文章で生活できるなんて素敵。普通の会社員が全力で小説家を目指します

『ティファニーで朝食を』トルーマン・カポーティ

 

 

皆さんは、同じ本を何度も読むタイプでしょうか
 
 
それとも乱読と言いますか、手当たり次第読むタイプでしょうか
 
 
私は後者でありますが、前者の方に対して少し憧れがあります
 
 
私のような読み方の方が、確かにたくさんの本を読むことができるかもしれません
 
 
ですが、やはりやや速読気味で、結論を急ぐような読み方になってしまいます
 
 
そのためか、私の記憶力の問題かは分からないのですが、比較的早くにどんな物語だったのか、記憶から抜け落ちてしまいます
 
 
もちろん人によって違うとは思います
 
 
多読でも、それぞれの小説の細部まで覚えてる方もいるでしょう
 
 
ただ、精読の人は同じ本を何度も丁寧に読むところから、細かいところまで読み切って、その書物を味わっているような気がします(私に比べて、、、ということになりますが)
 
 
次から次へと別の本を手に取ってしまう私ですが、そんな中でも何度も読んでしまう本がいくつかあります
 
 
 
 
最初に読んだのは、龍口直太郎氏の訳で、衝撃を受けました
 
 
何と言いますか、映画も見たことがなかったですし、ティファニーという冠も付いているので、小洒落た小説なのかなと思っていたのですが、良い意味で完全に予想を裏切られたのです
 
 
どれだけ素晴らしい小説でも、難癖をつけようと思えばいくらでもつけられるのでしょうが、少なくとも私はほぼ完璧な小説というものを見たような気がしました
 
 
こんな小説を書く人がいるのか、、、とその才能に羨ましさをを感じました
 
 
その後も、この『ティファニーで朝食を(新潮文庫)』は私の中で模範小説としてどこかで気になっていて、龍口訳で三回ほど読みました
 
 
その後は、村上春樹訳が出たので、そこで二度ほど読んだと思います
 
 
そして、先日新潮社のKindleフェアがあったので、そこで買って最近また読了しました
 
 
普通であれば何度も読んでいると、その時々の自分の状況や考え方で、以前よかったと思えた小説もさほどではないと思う経験がありますが、この本は本当に毎回私に、深い感動と、読後の強烈な余韻を与えるのです
 
 
もちろん、そこにはホリー・ゴライトリーという圧倒的に魅力的な女性がいるからというのもあるのですが、それだけでは説明がつかないような気がしていました
 
 
物語の構造のせいなのかな、と思ったこともあります
 
 
この小説は、冒頭にホリー・ゴライトリーの直近の噂が出てきて、その後主人公との思い出が回想されるという構成になっています
 
 
作者自らがハードルを高くするような予告的で魅力的な冒頭に対して、見事に期待を裏切らない展開がついてくるからかもしれませんが、それだけでもないように思いました
 
 
この小説にはおそろしいほどたくさんの魅力が詰まっているのです
 
 
あとがきを読んで、なぜこの小説が私の心をとらえて離さないのか、一つ気付かせてもらえました
 
 
なぜホリー・ゴライトリーがたくさんの男性に囲まれているのに、さほどステータスもないこの主人公と懇意にしたのか、ということが私は気になっていました
 
 
その理由は”中性的要素”と”落ち着きどころのない孤立性”を認めたから心を許したのだと、あとがきには書いてありましたが、私にはそこまではっきりと読み取れませんでした
 
 
本来であれば読者に対して、そう納得させるのは非常に難しいはずですが、この小説は、ごく自然にホリーが主人公に何らかのシンパシーを感じたのだ、と私に信じさせてくれる自然さがありました
 
 
最初にこの本を読んだ時、とてつもない才能の人がさらさらっと書いたように思ったのですが、実はこの長くない作品をカポーティは2-3年かけて戦略的に書いています
 
 
その逸話を聞いて、私も自省しなくては、、、と思いました
 
 
私の読書癖である多読と同じように、執筆も何となく思いついたものをささっと書いてしまうところがあります
 
 
以前、出版社の編集の方から見事にそのことを指摘されました
 
 
作家を志す者として、この作品から学ばなければならないことが本当にたくさんありました
 
 
カポーティ本人ですら、これほどの作品は二度と書けなかったと言います。他の作家にはもちろん書けません。やはりこれくらいのものを生み出そうという心意気で、真っ白な原稿用紙に向かいたいものです
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