職業作家への道

自分の文章で生活できるなんて素敵。普通の会社員が全力で小説家を目指します

北陸への出張旅⑨

 

 

いよいよ終わりが近づいてきております。前回はこちらです

 

 

towriter.hatenablog.com

 

 

ところで福井県というところは、収入は低くて貯金額は多いというデータがあるらしいので、きっと勤勉な県民性に違いない

 

 

それでもここは典型的なシャッター街の地方都市で、僕は少し悲しい気持ちで街を歩かざるをえなかった

 

 

そして、福井駅前の居酒屋にふらりと入った

 

 

こういうときにやはり福井の名産を頼まなくてはならない

 

 

まずはビールを頼むわけだが、おつまみはへしこの炙り焼き、永平寺豆腐、いかの黒造りにした

 

 

その後は黒龍という日本酒を頼んだ

 

 

あとはソースかつに日本酒の梵を頼み、玉ねぎのスライスで締めた

 

 

この店は福井駅に隣接しているが、なかなかいい店である

 

 

それなりの高級店で、どちらかとビジネス寄りで出張中のサラリーマンが仕事終わりに名物を食べにきているケースが多そうだった

 

 

と、言いつつも僕がまさしくそれではないか

 

 

ゆっくりと飲むつもりだったが、あっという間に目の前のものがなくなってしまう

 

 

店を出てから僕はほろ酔い加減で街を歩いてみることにした

 

 

大きな家がたくさん並んでいて誰かが住んでいるようではあるが、通りを歩いても人の姿はほとんどない

 

 

通るは車ばかりである

 

 

なんとなく物悲しい気持ちになるわけだが、飲んでるから気分はちょっと楽しかったりもする

 

 

土産物屋で日本酒梵を買い、ホテルに帰って仕事をしながら一人で二次会をする

 

 

そうしたら、また元気が出てきて、明日には帰宅するわけだからもったいなくなって再び街を歩くことにした

 

 

夜だからむしろ涼しくて気持ちいい

 

 

町の明かりと車の明かりだけで人がいないから気楽に歩くことができる

 

 

きっと僕が福井に住んでいたら、こんな夜をほっつきあるくようなことはせずに、家でごろごろしているだけだろう

 

 

なぜなら、僕は地元では夜は穴熊のように家から出ない

 

 

酔っ払った夜歩きは旅先だからできるのだ

 

 

いつもとは離れた見知らぬ街の夜道をひたすら歩くことの楽しさ

 

 

お酒を飲んでいてもいなくてもスリリングでやめられない

 

 

だが、危険な地帯ではやめておきましょう

 

 

どこが危険かは歩いていれば何となくわかる

 

 

若めの青年たちが用もなくうろちょろしてたら、そこはやめるべきである

 

 

いずれにしても女性は夜道の散歩は避けた方がいいと思われます

 

 

この福井の夜道の散歩は僕にとって結構印象的なものになった

 

 

それなりの繁華街を装っているわりに、夜も九時になったら全てシャッターが閉まっていて、本当に誰も歩いていない

 

 

十年前はもう少し人が多かっただろうし、十年後はさらに人がいなくなっているだろう

 

 

本当にいいのか、福井よ

 

 

僕は心の中でそう叫びながら街を彷徨した

 

 

何がこの街をここまで壊滅的に打撃を与えたのか

 

 

ここの人たちは気付いているのだろうか

 

 

昭和の途中まではそれなりに反映して活気があって育まれていた文化が、根こそぎ絶たれた本当の原因についてどう思っているのか

 

 

そう、現れたのはグローバリゼーションである

 

 

八百屋も文房具屋も書店も、あらゆる店を地域から奪った

 

 

いやいや、それはグローバリゼーションじゃなくて日本の企業のイオンとかでしょ、と言うかもしれない

 

 

だが、みんなが休日に車で行っているイオンこそがグローバリゼーションの正体でもある

 

 

世界に工場を持ち、血液のごとく物流を各地まで確立していれば、それはもうグローバリゼーションなのである

 

 

誰かが立ち上がらないと

 

 

この福井という由緒正しき伝統的な街を救うべく、この地で生まれた誰かが現れなくてはならない

 

 

そういう人が舞い戻ってきて、グローバリゼーションに対抗する

 

 

地方都市は少しでもそういうキーパーソンを見つける努力をしなくては、本当に十年後にはさらに減少して団塊の世代が死を迎えようとする二十年後には消滅に近い状態になるに違いない

 

 

ちなみに、福井の夜の街があまりに静かすぎて、僕はこの夜の散歩で少し涙ぐんでしまった

 

 

冗談ではなく、本当に人類が消えた後の世界の終わりを見たような気がしたのだ

 

 

ぐちゃぐちゃと考えていると少し雨が降ってきたから、僕はホテルに戻ることにした

 

 

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