職業作家への道

自分の文章で生活できるなんて素敵。普通の会社員が全力で小説家を目指します

北陸への出張旅⑩

 

 

前回は下記になります。そして今回が最終回です

 

towriter.hatenablog.com

 

 

ホテルに戻ると全身が疲れていたものの、なぜか寝付きが悪く、しばらく眠ることができなかった。とはいえ、十分程度で眠りに落ちたのではあるが・・・

 

 

翌日は朝食を抜いて朝からホテルにいた

 

 

福井駅近辺はもう歩きまくったので、今さら行きたいところも見当たらない

 

 

チェックアウトは11時だから、それまではホテルで仕事に専念することにした

 

 

ややもったいない使い方である

 

 

11時の直前にホテルをチェックアウトしてまずは昼食を食べた。越前おろしそばと焼き鯖寿司である

 

 

正直言ってそばは富山よりもおいしく、焼き鯖寿司は今まで食べた中で一番おいしかった

 

 

ちょっと信じがたいくらいで、この後空港に移動した後も一本買って一人で全部食べてしまった

 

 

福井駅や空港でお土産をささっと買ってからは、空港の展望台で飛行機を見ながら、この旅日記をずっと書いていた

 

 

時間は結構残されていた

 

 

天気はよくて次々と飛行機が飛び立っていく

 

 

だが、ここのメインは軍用機らしい

 

 

とんでもなく先の尖った戦闘機がこれまで聞いたことのないような轟音であっという間に空へ消えていく

 

 

なかなか貴重な経験だった

 

 

もしこの辺に僕が住んでいたら、無料だし広い空間が見えるから空港によく訪れていたかもしれない

 

 

地方都市に行くとそういう夢想をよく僕はする

 

 

もしこの場所に生まれていたら僕は違う職業についているし、違う両親に生まれて異なる姉弟構成で、現地の女性と結婚していたりして、見知らぬ友人と遊んでいる

 

 

そうなると顔も性格も今の僕とは全くの別人なわけで、もしかしたら隣のテーブルに座っているおじさんみたいな感じになっていたのかもしれないのだ

 

 

そう思いながら隣のおじさんの顔をしげしげと見てしまったりする

 

 

だからナンだというわけでもないが

 

 

飛行機は十分ほど遅れて飛んだ

 

 

それぞれの客にはグレードがついているらしく、荷物チェックの際に渡された紙に自分のグレードが書いているから、それを見て搭乗してくれというアナウンスがあった

 

 

1,2,3,4という順で呼ばれるらしい

 

 

僕はその黄色い紙をすぐになくしてしまい見当たらなかったから、最後の4番まで待って飛行機へと乗り込んだ

 

 

ANAを初めて使うから僕のグレードが高いはずもない

 

 

間違いなく4のはずだった

 

 

飛行機は加速していき福井の地上を離れていく

 

 

僕ももういい歳になってきていて、離陸の瞬間に胸を時めかせることもなくなってきている

 

 

上昇している間に急激に眠くなり、起きたのは羽田空港にどしんと着陸した衝撃によってだった

 

 

まるまる一時間以上寝ていたようだった

 

 

寝ぼけながらいつものリムジンバスで切符を買い、すぐに出発するから急いでバス停へと向かった

 

 

間に合ってほっと一息つきながらかばんを胸に抱えて座ってバスから外を眺めた

 

 

また翌日からいつものサラリーマン生活がはじまる

 

 

北陸の旅では気ままにやっていたから、オフィスで一日中パソコンをたたいて会議に出る生活は窮屈に感じるだろう

 

 

バスの中で会社のパソコンだとか携帯とか、忘れ物はないかとかばんの中をチェックしていたら、福井の小松空港でもらった黄色い紙が出てきた

 

 

そこには3と書いていた。なんだか、嬉しいような恥ずかしいような、ちょっと損したような、初めて乗ったのに3だから誇らしいような、なんだか複雑な気分だった

 

 

でもそれを周りの乗客に悟られないように、僕はクールな面持ちで外を眺めた

 

 

きっと明日の会社でも、同じように感情の表現をしないで、こうやって表情をつくったまま、パソコンをカタカタ叩くのだろうな、と思いながら

 

 

<北陸への出張旅、完>

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