私は古書店を見て歩くのが好きでした
長いこと趣味の欄があれば、古書店巡りと書いてきました
本当は今も好きなのですが過去形で書いています
というのも、私が大好きだった古書店たちは、この20年で絶滅してしまって、もう古書店をめぐりたくても、そういう古書店存在しないのです
かつては、知らない街をぶらっとしたら数件の「街の古本屋」がありました
ですが、今ではほとんど見つかりません
いやいやブックオフがあるじゃないか、と言われる方があるかもしれませんが、私がイメージしている古書店とは違います
街の古書店にはそれぞれ個性があり、どれだけ汚くても情報として価値があるものであれば、高値をつけて店先に出していました
ですが、ブックオフは汚ければ廃棄していしまいます。それでどれだけ貴重な書籍が葬られたか想像もできませんが、かなりの量のように思います
どのブックオフを回っても大方同じ本しか置いていません(とはいえ、私も利用しておりますが・・・)
街の古書店には、絶版本を特別扱いする文化がありました
つまり、新刊本屋ではすでに扱っていないものを、情報の希少価値として高値で売っているのです。古書店の主人は目利きができました
私が街の古書店を歩いていて楽しかったのは、思わぬ絶版本が安くで手に入ったりしたからです
ものすごく面白い作家なのに、ほとんど手に入らないものがいくつもありました
皆さんにとってモームはなじみが深いかもしれません。今でも新潮文庫や岩波文庫でたくさん並んでいます
ですが、かつてモームは新刊の本屋さんでもっとたくさんの本が置かれていました。ですが、大半が絶版となってしまっています。人気作家ということもあり、古書店ではかなりの高額になることが多いです。緑と紺のカバーで、それを見た瞬間、胸が高鳴ります
一方で、モラヴィアというのは知らない人が多いかもしれません。イタリアの作家で角川文庫からたくさん発売されていました
この二人の作家はどの作品も、つまらないという経験をしたことがありません
モームの著作は今でも読めますし、またどこかで紹介したいと思いますので、今回はモラヴィアです
誰も興味がないと思いますが、私は実は「冒頭のよかった小説ランキング」を勝手に決めております
その栄えある第一位がモラヴィアの『軽蔑』なのであります
この作品は長く絶版でほとんど手に入らなかったのですが、集英社の世界文学全集で生き返らせてくれました。少しお高いですが・・・
では、冒頭を引用させていただきます
”今になってはっきりと言うことができるのだが、結婚して最初の二年間は、妻とわたしの関係は完全なものだった。”
この冒頭からモラヴィアは読者の首根っこを掴んで放しません
他の小説も非常に面白いのですが、系統としては谷崎潤一郎に近いものがあると言えば、少し想像がつくかもしれません・・・