幸運なことに、私の街には昔からある古本屋さんが一軒だけ残っています
昔は隣り町にも、その隣の街にも、古本屋さんはたくさんありましたが、現在はブックオフなどに駆逐されて、ほとんどその姿を消してしまいました
敷地がそれほど広くないので、何かいい本ないかなと探すときはうってつけですし、価格も妥当な気がします
最近のブックオフは、百円でない棚がひどいものになっています
定価800円の本が、500円で売られていることは当たり前です
同じ本で比較してみましたが、街の古本屋では300円でした
しかも状態も非常にきれいですので、どう考えても街の古本屋で買った方がお得です
少し時間があったので、何か最近の作家さんの本を探そうとしていると、ふと面白そうなタイトルが目に留まりました
それが『その可能性はすでに考えた (講談社文庫)』です
裏表紙を読むと、山村で起きたカルト宗教団体の斬首集団自殺を探偵が解決しようとすると書かれているではないですか
個人的には非常に興味をそそられる設定でした
定価は760円で、ラベルを見たら200円です
ブックオフならきっと500円でしょう
迷わず買うことにしてしまいました
一時期、ミステリーにはまっていましたが、最近はあまり読まなくなっていました
新しい作家のミステリーを手に取るのは久しぶりのことです
そして家に帰り、買ったその日のうちに読破してしまいました
ミステリーでネタバレはよくないので、あまり内容に踏み込んだお話は控えようと思っております
現代のミステリーというものも、過去の名作を土台に複雑な進化を遂げているなぁ、という感想をいだきました
始まりは伝統的なもので、探偵事務所にお客さんが来ると言うフォーマットではじまります
ですので、私は勝手に探偵がその現場に依頼者とともに向かうものだとばかり思っていましたが、そう簡単に予測は当たりません
では、どうやって解決するかといえば、どちらかと言えばホームズ的なやり方で難問を解きます
そして、次々と刺客が現れるのですが、そこが非常に考え込まれていて、論理的かつ鮮やかに真相が明るみに出てきます
とはいえ、どのミステリーでもそうだと思いますが、一部納得いかない人はいるかもしれません
この本は、かつてのミステリーのように動機一本で勝負するような分かりやすいものではなく、ロジックを土台から積み上げていくというかなり複雑なものをできるだけ分かりやすく説明してくれています
そこに私はミステリーの現代性を感じました
トリックというのは現代では本当に出尽くしていて、それでも果敢に挑戦する若き作家たちが、その知性をフル活用して絞り出して、苦心しながら作り上げていることがよく分かりました
そういう意味で、私の考えているようなことはやや現代に取り残され気味で、まだまだ考え方を進化させていかなくてはならないのだと、改めて気付かされました
ミステリーのみならず、純文学の世界でも複雑化しているのかもしれません。私が最近予選も通らなくなっているのは、その複雑性に追い付いていないからではなかろうかと思いました。それは、科学技術が発展したというよりは、より人間の思考がこんがらがっていて、昔は重い悩みのようなテーマだったものが、現代では悩み以前に自分が今何を考えているかも分からない、といったようなものにシフトしているのかもしれません