職業作家への道

自分の文章で生活できるなんて素敵。普通の会社員が全力で小説家を目指します

はるか昔の軽井沢

 

 

これまで軽井沢には二度ほど行ったことがありました

 


最初に軽井沢へ行った頃、私はまだかなり若くて何もかもに興味がありました

 


巨大なショッピングモールには何日かかっても見切れないほどの膨大な量の商品があるように見えましたし、旧軽井沢までの散歩道には数知れない秘密が隠されているような気がしました

 


軽井沢という場所には貴重な歴史があり、歩いている時も油断せずに少しでもそういった残り香を吸い込もうとしていました

 


私が何を知っているわけでもありませんが、何か特別なものが軽井沢という場所にはあるような気がしていたのです

 


最初の軽井沢はせいぜい二泊三日程度でしたが、軽井沢に行ったことを無駄にしないためにも、私はその後も軽井沢という地域を意識するようにしていました

 


そういうこともあって、どこかの古本屋で『軽井沢物語 (講談社文庫)』という本を見つけて衝動的に買っていました

 

 

ですが、残念ながら途中まで読んで辞めてしまいました

 


まだ若かった私はドラスティックなものを好み、その資料的価値のある別荘の歴史のような内容は退屈だったようです

 


あまり知らない人物達が、あまり知らない土地を舞台にしていて、軽井沢の土地や歴史に詳しくない私にはきちんと読み進むことができませんでした

 


似たような経験が他にも何度かあります

 


スペインのアルハンブラ宮殿から帰ってからしばらくして、どこかの古書店で『アルハンブラ物語 (講談社文庫)』という本を見つけて買い、結局読み通すことができずにいます

 


旅行の最中やその近辺では強い気持ちでいたにも関わらず、日常生活に戻ってしまうと、急速に旅情が薄れてしまうのは、なぜなのでしょうか

 

 

もしかしたら、私だけではないかもしれません

 


これは旅先でのお土産と似たような現象なのかもしれません

 


旅先での熱量というものは、よく小説にもなっています

 


旅先で恋に落ちて、旅先から帰ると旅情の記憶が薄れていくという話は誰もが既視感を覚えるでしょう

 


私も一度、そういう話を書いたことがあります

 


自分のルーツがマカオにあると聞き、香港経由でマカオへ趣き、そこを訪ね歩いている時に知り合った現地の女性と共に行動し、いくつかの謎が解けていくという話でした

 


残念ながら、その作品は一次選考も通っておりません

 


個人的には納得いかずに、少し書き直しをして再度送ったのですが、やはり一次も通りませんでした

 


これは純文学ではなく、謎解きの要素もあると思い、さらに改編して物語性のあるものにして、エンターテイメント系の賞に送ったのですが、やはり通りませんでした

 


今思えば、かなりありきたりな内容で、感傷的すぎただったのかもしれません

 

 

私自身、物語に没入し過ぎていてその女性のことを心から同情してしまっていました

 

 

トルストイはどこかの評論で、作者というのはどの登場人物も愛さなければならないし、そうでなくては全体的な物語は書けない、と言っていたような記憶があります

 

 

トルストイの言っている意味を私が正確に理解しているとは言い難いですが、少なくとも、「作者が登場人物を等しく愛している物語」とは言い難いものがありました

 


話は凄まじく脱線してしまいましたが、ものすごく久しぶりに軽井沢を訪れました

 


何か用事があったわけではなく、ただの旅行で行きました

 


そして、最初の話に戻るのですが、今の私には驚くべきことに、軽井沢はどこにでもある観光地に見えてしまっていました

 


その街の中の断片に歴史を感じることはほとんどなくなっていて、有名な観光地によくある風景にしか見えませんでした

 


もちろん、場所としては相変わらず素敵なところでした

 


関東であれば35度を超えるような暑さですが、30度もいかない程度で本当に過ごしやすかったです

 


街全体にも品があり、せかせかしていないからゆとりがあるように見えます

 


年老いた時にお金を持っていたら、確かに過ごしてみたくなる気持ちも分かってきます

 


ゆったりと犬を散歩させている人の割合が高いことにも気付きました

 


ちなみに、かつての上司で偉くなった人がいて、その人は奥さんも偉くなっていて、おそらく年収は二人合わせて四千万を超えていたと思うのですが、二人は引退して犬と共に軽井沢で暮らしています

 


そういう人が好む街なのだろうというのが分かりました

 


かつての私はそんなことなど微塵も考えておらず、軽井沢という場所から生まれてくる思想や執筆のプロットはないかと必死に考えていました

 

 

そして、時を経て、何のことはありません

 


私は長いサラリーマン生活で完全な俗物になってしまっているということが、この軽井沢を定点にして自分の思ったことを比較してみることで、はっきりと分かったような気がしました

 


そして、軽井沢で何をしたかといえば、ショッピングモールを見て、旧軽井沢を歩き、レンタサイクルで近辺をまわるという、るるぶで最初に初回される定番コースみたいなことをしてしまいました

 


軽井沢に新幹線が通ってからは、東京から一時間程度で行けるほどアクセスが良くなっています

 


かつ、何かにつけて行く機会は人生で何度かある可能性が高い場所です

 


避暑地、ウィンタースポーツ、結婚式、ショッピング、デート、卒業旅行、会社や学校の保養所などなど

 


その時に、ぜひお試しいただきたいのは、軽井沢を定点として、自分がその時々で何を考えているか刻み込んでみていただくということです

 


思った以上に自分という人間が、良い意味でも悪い意味でも変わってしまっているという発見があるかもしれません

 

 

と、軽井沢に旅行したことを何か書こうと思ったのですが、最初の構想からはめちゃくちゃ離れてしまい、紀行文でもなんでもなくなってしまいました・・・

 

 

 

 

 

軽井沢が舞台の小説といえば、もう間違いなくこれです。とてつもない大作です。そういえば、以前にこのブログでご紹介させていただいたこともあります。軽井沢に興味がある方は、ぜひご一読ください!私のブログではなく『本格小説(上) (新潮文庫)』を!!!

 

towriter.hatenablog.com

 

 

 

 

 

 

今では絶版がほとんどなのでしょうが、この講談社文庫の『××物語』シリーズは評価も高いのです。旅行の際は携行したいですね

 

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