このブログではあまり日本人の女性の作家は紹介しないな、、、と思われている方がいらっしゃるかもしれません
確かに私の読書は少し男性作家の方に偏っているようです。バランスのよい読書を心がけようとは思っておりますが
あくまで憶測ですが、読者というのは同性の作家を好む傾向があるようです
人は同性の作家を好んでしまうものの、発見が多い(勉強になる)のは異性の作家の本を読んだときかもしれません
ですので、意識的に異性の作家の本もたくさん読んでいこうと思っています
ちなみに私は女心がよく分かってないのですが、(そんなんでよく職業作家を目指しているな、とはよく言われます)絲山秋子の作品は非常に分かりやすく教えてくれます
思いっきりストレートな感情を書いてくれていて、周りを意識して自己愛に満ちているような女性は登場しません
この本の主人公は12年もの間、一人の男性を愛し続けます
ですが、付き合うこともなく、つれなくされたままです
しかも、その男はぱっとしない男で、それほど魅力的には見えません
ただ、それだけの話なのですが、これまでに見たことがない恋愛小説?だったので何か新しい可能性がありそうに思えて少し興奮しました
恋愛小説というのは、そうとうな数があるのでややパターン化されているような気がしますし、少女漫画を想起してしまう読書体験もあったので、私の偏見はこの本のおかげで補正されました
何と言っていいか分かりませんが、まだまだ恋愛小説には様々な形がありうるという希望が湧きました
考えてみれば恋愛小説とは、基本的には破局が前提になっているかもしれません
というのも、恋愛とは極端に言ってしまえば、「興奮状態の期間」を表しているからです
もちろんハッピーエンドもあるのでしょうが、それでは物語になりにくいでしょう
大恋愛の末におしどり夫婦になって、半世紀ほど同じ家で暮らしました、という物語はもうすでに恋愛小説ではないです
終わり(破局)があるからこそ恋愛小説は盛り上がるというものです
そういう観点で、この本の中間的というかぐらぐらした感覚は、今まで読書体験で感じたことのない性質のものでした
これは私が最初に読んだ絲山秋子の本なのですが、彼女の著作の中でも『袋小路の男』が最も好きな作品かもしれません
この方は、読者の感情を丁寧に誘導できる、すごい実力を持った作家だと思います
それほど長くないので、私は軽い気持ちで読み始めたのですが、途中からひたむきな姿に私は心を揺り動かされました
もっと多くの人に読まれるべき作品だと思いました