私はいつも五賞などと言って、ひとくくりにしております
ご存じの通り、文學界新人賞、群像新人賞、新潮新人賞、すばる文学賞、文藝賞の五つをまとめております
これに太宰治賞を入れてもいいのではないか、というご意見もあるかもしれません
なぜなら、そうそうたる顔ぶれの作家を輩出していますし(吉村昭、加賀乙彦、金井美恵子、宮尾登美子、宮本 輝など)、ちくま書房という文学関連にも強い出版社が主宰している賞だからです
文芸誌を出していないのが五賞との違いですが、確かに入れてもいいくらいの知名度になりつつあるのかもしれません
応募総数も1000通を超えているので、受賞も簡単ではありませんし、プロ作家への道にもつながる賞に間違いはありません
まあ、私の定義はともかくとして、表題の『太宰治賞2023』を読みました
とはいっても、まだ受賞作の『自分以外全員他人』を読了したのみになります
恥ずかしながら、太宰治賞受賞作を読んだのは久しぶりのことで、いつ以来かといえば、復活した直後の1999年第十五回の冴桐由さんの『最後の歌を超えて』以来です
この『最後の歌を超えて』というのは、私の読書体験の中でも印象に残っているもので、文学系にしては珍しくSF的な設定で、この作者の才能を強く感じたものでした
今後、活躍していくのだろうなと思っていましたが、二作ほど出したのみで、その後は特に作品を出していないようでした
もし、これがご本人は出そうと思っているのに、出版社が受け入れないのでしたら、あまりに厳しい世界です
一作しか読みませんでしたが、それくらいに印象の残った素晴らしい作家さんでした
そして、それから十年以上経って、久しぶりに読んだ受賞作ですが、『自分以外全員他人』もなかなかの力作でした
そして、私は純粋な読者という立場である一方で、創作者として自分の作品を省みながら読んでいました
現実世界が目の前にあるかのような細部のリアリティがうまく描かれています
「もしかして、この人は自分の体験を書いているのかな?」と思わせるのは、やはりこの作者の優れた資質の一つだと思われます
太宰治賞は最終候補に残った作品を単行本として読むことができるのが素晴らしいところです
そして、一次選考以上通過した方は、在住の都道府県と年齢も記載されるので、公募に応募する方々はいろいろな意味で参考になるかもしれません
ちなみに、最年少は15歳で、最高齢は84歳でした
文学と言うのは創作者の年齢を問わないことがこれでよく分かります
何歳になっても目指して構わないのです
諦めずに長期的に目指していきましょう!
こういう単行本は非常に価値があります。五賞の出版社も、毎年一度のイベントとして雑誌の一部に掲載するのではなく、このような形で最終候補も含めてオープンにできないものでしょうか。昨今は電子書籍もありますので不可能ではないはずです!