職業作家への道

自分の文章で生活できるなんて素敵。普通の会社員が全力で小説家を目指します

たまに思い出す人(前編)

 

 

特に仲が良かったわけではないのに、ある場所を通り過ぎたり、あるものを見たりすると思い出されてくる人というのが、誰にでもいるかもしれません

 

 

私にとって会田くん(仮名)というのが、それにあたります

 

 

会田くんとは中学時代の知り合いでした

 

 

特に仲が良かったわけではなく、同じ部活というのが唯一の共通点でした

 

 

私は中学の途中で引っ越しをすることになりました

 

 

とはいえ、隣町に引っ越す程度の移動で、中学校は変わ離ません

 

 

同じ地区内で引っ越した場合、中学生にとって何が大きく変わるかといえば、登下校するメンバーということになるかもしれません

 

 

私は会田くんとあまり親しくはなかったのですが、引っ越してからは帰り道は同じ方向ということで、たまに一緒に帰るようになりました

 

 

当時の会田くんはすごく背が高くて、ちょっとふざけるのが好きで、じっくりと会話をするタイプでもなく、共通の趣味もなかったので、二人で帰ってもあまり盛り上がるということがありませんでした

 

 

私よりも精神的に成熟していて、英語が得意だったので、私の知らない話をいろいろしてくれたと記憶しています

 

 

帰り道、会田くんの方が先に家に着きます

 

 

大きな敷地の家に入っていくので、私はずっと会田くんの家はお金持ちだと思っていました

 

 

一つ気になっていたのは、その家の表札が会田という名字ではなかったというところです

 

 

ただ、中学生ですから、そんな他人の家など何の興味もありません

 

 

当時の私は部活であるバスケットボールのことばかり考えて生きていました

 

 

そのうち、会田くんも私も学校には内緒で自転車通学をするようになり、一緒に帰ることはなくなりました

 

 

(中学校の近くにある空き地に自転車を置いて、何食わぬ顔をして歩いて登校するというわけです・・・)

 

 

一緒に帰らなくなったとはいえ、同じ部活ですので、グループの中で一緒に遊ぶことはありました

 

 

そして、ある時、会田くんの家の名字がどうして違うのか、謎が解ける日がきました

 

 

会田くんは歳の離れたお兄さんがいるということで、アダルトなビデオを持っているという、隠れた自慢をしていることがたまにありました

 

 

もちろん、年頃の中学生男子たちが気にならないはずがありません

 

 

会田くんの家も夜まで誰もいないという日があり、私たちは会田くんの家に遊びに行くことになりました

 

 

大きな敷地に入ると、左にはお屋敷のような巨大な家があるのですが、会田くんはそちらには目も向けず、右の奥の方へ歩いていきます

 

 

離れのようになっている小さなプレハブ小屋でした

 

 

「俺の母ちゃんがここの家の人とちょっとした知り合いでさ、間借りさせてもらってんだよ」

 

 

そして、その時に会田くんが母子家庭で、この小さなプレハブでお兄さんと三人暮らしをしているということを初めて知りました

 

 

今くらいの年齢になれば、彼の家庭環境のことについていろいろ想像したりするのかもしれませんが、その時の私たち(いや、私だけかもしれませんが)は、頭の中はアダルトなビデオというものは一体どんなものなのだという好奇心しかありませんでした

 

 

少し長くなってきたので、続きは次回としたいと思います(変なところで切れますが・・・)

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