職業作家への道

自分の文章で生活できるなんて素敵。普通の会社員が全力で小説家を目指します

スターバックス リザーブにて(前編)

 
 
少し前に姪から誕生日プレゼントということでスターバックスのデジタル券をもらいました
 
 
私はあまりスターバックスに行くことはありません
 
 
理由は色々あるのですが、いつ通っても混んでいるからだと思います
 
 
そういった背景から、以前別の方にもらったスターバックスカードの有効期限を切らせてしまった経験があります
 
 
ですが、せっかく姪がくれたんだから、有意義に使いたい、、、
 
 
そういうわけで、私はとある用事で都会へ行った時の合間にスターバックスへ行ってみることにしました
 
 
もらったチケットは、700円までのドリンクと300円までのフードというものでした
 
 
メニューを見てみると、700円くらいの飲み物は、なんとかフラペチーノみたいに甘いものばかりですが、わたしはあまり甘いものが好きではありません
 
 
ブラックのアイスコーヒーみたいなものが飲みたかったのです
 
 
ですが、アイスコーヒーのようなものは300円くらいなので、ちょっともったいない・・・
 
 
そこで、レジで色々と考えていると、店員の人が助け船を出してくれました
 
 
「700円のチケットを活かすのであれば、こちらのメニューはいかがでしょうか」
 
 
店員さんが見せてくれたのは、限られた店でしか取り扱いがないと言われるメニューでした
 
 
コーヒー一杯で千円を超えるものがいくつもあります
 
 
そして、店員さんは言いました
 
 
「お作りするのに、5分から10分くらいお時間かかりますが、よろしいでしょうか」
 
 
待ち時間なら、かなりありました
 
 
たまたまメニューの中に600円台のものがあったので、店員さんはそれを勧めてくれました
 
 
「では、あちらの予約席へどうぞ」
 
 
ということで、私は身分不相応な場所に通されました
 
 
目の前では、笑顔の朗らかな女性がコーヒー豆を炒ってくれます
 
 
ただ、マスクをしているから、あまり何を言っているか分かりません
 
 
彼女は銀色のコップを私に手渡してきます
 
 
中を見るとコーヒー豆がぎっしりと入っていました
 
 
何をして良いか分かりませんが、私はマスクを取って匂いを嗅いでみました
 
 
コーヒー豆のとてつもなくいい香りがします
 
 
「ああ、濃厚ないい香りがしますねぇ」
 
 
特別席で落ち着けていない私は、知ったような口を聞くしかありません
 
 
「もう少し季節が違うと、アフリカとか良くなってきますけどね」
 
 
「確かに、そうかもしれません」
 
 
この席に座らされて、豆を炒るところを見学している者として、知ったかぶりをする以外に、私はいかなる反応もできません
 
 
次に彼女は、豆を炒ってくれました
 
 
辺りにコーヒーの匂いが広がります
 
 
朗らかな彼女はまた銀色のコップを渡してきました
 
 
中を見ると、先ほどのコーヒー豆が砕けて粉末になっています
 
 
おそらく、また嗅いでみよ、ということでしょう
 
 
私はそれに抗う術を持ちません
 
 
「ああ、炒ることで、さらに深みが増していますね」
 
 
彼女はにっこりとして、何かを言いました
 
 
ですが、必死の私はとりあえず失言ではなかったことにほっとして、相手が何を言っているか聞き取る余裕はありません
 
 
コーヒーマシンが音を立てています
 
 
ときおり彼女は、私の嗜好など聞いてくれたり、コーヒーのいろはについて教えてくれました
 
 
それ以外は、ただただコーヒーマシンを私と彼女で凝視するのであります
 
 
そして、しばらくして銀色のコップにコーヒーを注いだ彼女は、恐るべき行動に出るのです
 
 
なんと、小さな紙コップにコーヒーを注ぐと、彼女は向こうを向いて、きゅっと飲み干したのであります
 
 
そして、振り返りました
 
 
「すみません、、、もう少しお時間いただいてもよろしいですか?」
 
 
私は衝撃を受けている顔など微塵も見せずに、好青年のようににっこり微笑みました
 
 
「もちろん、いいですよ」
 
 
私は豆にこだわる上質な人間のように振る舞わざるを得ません
 
 
まさか味見をするとは思いませんでした
 
 
この時点で、私は走ってスターバックスから逃げ出したくなっています
 
 
一瞬、かばんに手をかけようとする自分がいますが、そんなことが出来るはずもありません
 
 
そんなことをしてしまえば、姪も、この善意の店員さんも、スターバックスグループも傷つけることになりますから
 
 
そして、ようやく出来上がりました
 
 
彼女はまた銀色のカップにコーヒーを注ぎます
 
 
正直に言えば、私もかなり喉が渇いていました
 
 
ですが、また驚愕の行動は繰り返されたのです
 
 
彼女は小さい紙コップを再び取り出し、くっと飲んだのです
 
 
「また!!!!」と言いそうになりますが、予約席に座る上品な客はそんなこと間違っても言いません
 
 
そして、彼女は振り返ってこっちを見て頷きました
 
 
私もどれだけ共感的な表情で大きく頷き返したか、皆さんにも見ていただきたいくらいです
 
 
次に続きます。ちなみに、後から下記のサービスのことだと知りました
 
 
プライバシーポリシー