このブログをご覧いただいている方は、小説を書いている人が多いと推察いたします
(もちろん、そうではない方もいらっしゃると思いますし、そういう方も歓迎しております)
小説を書かれている方だとしたら、初めて小説を書いたのは何歳のことでしょうか
たまにものすごく若くしてデビューされている方がいます
私の記憶にある中で最も若い方は、『平成マシンガンズ (河出文庫)』を書かれた方かもしれません
文藝賞をとった時、じゃっかん15歳です
この作品を評価するかどうかはともかくとして、素朴に15歳ですごいなぁと感心してしまいました
15歳といえば、まだ公園でそれなりに楽しく遊んでいたり、部活に夢中になったりという年齢だったと記憶するので・・・
ただ、作品は陽の目を見なくても、もっと若い時に書いてらっしゃる方は結構いそうです
『手長姫 英霊の声 1938 -1966 (新潮文庫)』という短編集です
その中に、「酸模(すかんぽう)」という作品があるのですが、三島由紀夫が13歳で書いた作品です
時代が違うからかもしれませんが、現代の我々が作者名を伏せられてこの作品を読んだら、「うん、これは13歳が書いたものだ!」と分かることはないように思います
作品の良し悪しはともかくとして、13歳といえば、まだ鬼ごっこで必死になれる歳だったので、この作品は驚異的です
そして、三島由紀夫という人は、少年の頃からやはり作家としての才覚を十分に持っています
この13歳の少年が大きくなって『金閣寺』を書きました、と言われたらしっくりくるのです
若かりし頃の作品というのは、やはり本人の面影が残っているものです
ところで、誰もが自身で最初に書いた小説のことを、生涯忘れられないように思います
最初に書こうと思った時の高揚感、実際にペンを持って(パソコンを開いて)書き始めた時の迷い、書き上げた後の興奮と不安の不思議な感情
そういったものは、多くの人が最初に小説を書きはじめた時に感じたものかもしれません
そして、これは私のカンでしかありませんが、最初に書き上げた小説というのは、下記のような傾向があるように思います
・かなり短くなる
・いささか背伸びをしている
・思わせぶり(だからといって伏線になっているわけではない)
・深みを持たせようとしている(だからといって深みがあるわけではない)
・自分の感性(感想)を前に出し過ぎている
なぜ、そんなことが言えるかといえば、多くの作家の処女作にそういう傾向があるように感じますし、私にもそういう経験があるからです(もちろん、比べるべくもないのですが・・・)
そして、その後も何本か小説を書きつつも、しばらくは同じような過ちを繰り返してしまって、その頃は予選も通過することができませんでした
どこかのタイミングで、自分の問題点に気付いて修正するようになって、ぱらぱらと予選を通過することができるようになりました
逆にいえば、小説にもやはり一定のレベルまでの上達というものがあると言えそうです
ちなみに、平野啓一郎氏は17歳で初めての小説を書いて、周りの人に見せたらしいですが、その時はぱっとした評価を誰からももらえなかったそうです
その時、彼は自分の問題点に気付いたのだと思います
そして、ご存じの通り、華々しく大学生でデビューしています
なぜ、私がこんなことを書いているかといえば、自分が書いた最初の小説にこそ、ご自身のいいところと悪いところが多分に含まれていて、そこにはいくつものヒントがあるのではなかろうか、と思ったからです
はしゃいでいる自分の昔の写真を見るくらい、最初の小説というのは恥ずかしいと思いますが、振り返って読んでみるといくつもの気付きがあるかもしれません
スランプに陥ったら、立ち返ってみるのも一つの手だと思います
やはり円熟期の三島由紀夫と比較することはできませんが、若くしてとんでもない短篇を書いていると感心します。こういった書籍を今さらながら出してくれるのはありがたいですよね