職業作家への道

自分の文章で生活できるなんて素敵。普通の会社員が全力で小説家を目指します

アンコンシャス・バイアスという概念(後編)

 

 

前回からの続きです

 

 

二つほど例を挙げさせていただきましたが、おそらくアンコンシャス・バイアスを排除したい企業としてはこの上司の判断は正しいということになりそうです

 

 

そして、公平性という観点からは明らかに間違っていないのでしょう

 

 

配慮は必要だとしても、偏見を元にした判断や、ワークロードの偏りは避けるべきですから 

 

 

最近の企業が重視しているのは「女性従業員者比率」「女性の役員比率」「女性の管理職比率」という項目で、男女比を半々に持っていきたい意志があります

 

 

それが企業としての先進性を表すということなのでしょうか

 

 

ただ、前述した二例に違和感を覚えた人も多いかもしれません

 

 

そうです、アンコンシャス・バイアスを意識的に排除しようとすると、先回りした優しさが失われてしまいます

 

 

それを配慮と言うのか偏見と呼ぶかは、難しい境目です

 

 

私は常々、完全な公平性を目指すというのは、正しいゴールではないのではないかと思っています

 

 

この概念で優先しているのは、性別ではなく人種ではなく属性ではなく、あくまで「偏見を持たずに人を横並びにした時の公平さ」なのです

 

 

それ以外は、偏見ではないか?と問いかけてきます

 

 

もちろん、どの企業も、このアンコンシャス・バイアスというものが全て悪だと規定しているわけではないのかもしれません

 

 

ですが、この概念は、人を傷つけることを恐れるあまりに、配慮や気遣いまでも消失させかねない危険なもののように私は感じました

 

 

もちろん、ラガーマンやエースからしたら、この上司の采配はありがたいものでしょう

 

 

若手の男性社員だからって、何でもかんでも命令されても「なんでいっつも俺ばっかり・・・」と思っているかもしれません

 

 

そして、そういった苦難を耐えてきているから、管理職になったり役員になっていくのです

 

 

まあ、そういった過程があって、今の会社が存在しているのでしょうが、会社自らがその男女比を是正しようとしている・・・。なんとも不思議なお話です

 

 

今まで数々のアンコンシャス・バイアスによって助けられた人は無数にいたと思います

 

 

そして、その影で傷ついた人も多くいたに違いありません

 

 

にもかかわらず、偏見という負の側面だけをフォーカスして、表にはあまり現れていなかった先回りした優しさがよくなかったものであるかのように取り上げられる概念ということに、やや危惧を覚えます

 

 

そうやって、我々はまた知らないところで大切なものを失いかねません

 

 

ある哲学者は、「世界は解釈のみで成り立っている」と言いました

 

 

確かに人は自分の目を通してのみしか世界を眺めることはできません

 

 

よって、人は偏見のみでしか世界を見ることはできないと言い換えてもいいはずです

 

 

そこには言うまでもなく、善も悪もごちゃまぜに紛れ込んでいます

 

 

例えば、老人に席を譲るという行為があります

 

 

結構前に私は一度経験があるのですが、席を譲ろうとした方にすごく怒られました

 

 

その女性はまだ年寄りではないから失礼だとおっしゃるのです

 

 

確かに私は無礼だったかもしれません

 

 

お年寄りは疲れやすいというアンコンシャス・バイアスを持っていました

 

 

それ以来、私は基本的にお年寄りに席を譲る行為をやめることにしました

 

 

ですが、しばらくしてやはり譲ることにしました

 

 

というのも、やはり車内にはどうしても苦しそうなお年寄りがいらっしゃるのです

 

 

話が少し逸れているかもしれません

 

 

このアンコンシャス・バイアスを取り払おうとする動きは、良かったものまで失ってしまいそうな予感がするのですが、私の気のせいでしょうか

 

 

誤解されたくないのですが、人種、障がい、体形、出身地などの差別は何があっても許されるべきではないという観点は、アンコンシャス・バイアスと同じ立場です

 

 

ただ、これだけ世界が注目している言葉なので、私の言っていることは筋違いで間違っているのかもしれません・・・

 

 

今回、男女についての議論が中心となってしまいましたが、もっともっと広域に展開されています

 

 

例えば、血液型・学歴・前例・慣習などなど

 

 

興味がある方は調べていただくといいかもしれません

 

 

ただ、賛否はともかくとして、このアンコンシャス・バイアスという概念が、いろいろと考えさせてくれる契機になることに間違いはないでしょう

 

 

 

内田樹氏の議論の展開の仕方というのは、いつも脱帽してしまいます。そして、大胆な仮説にもかかわらず、論理は精密です。彼の意見には反論は可能なのかもしれませんが、その反論を読み切ったうえで、彼はモノを書いています。そして、その言葉はものすごく分かりやすいです

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