すでにご存じの方がほとんどだと思いますが、原寮さんが逝去されました
私は純文学志向ではありますが、それだけではなくノンフィクションにもミステリーにも歴史にも興味があります
純文学以外の分野で、私に強いインパクトを与えてくれたのが原寮さんでした
私が原さんの本を手に取った瞬間を今でも覚えています
このミステリーがすごい、という冊子を読んだ時に彼の名前があって、頭の中に残っていました
当時、私は週に一度、近くにある古本屋に行って、好きな本を五冊くらい買って、コンビニでジュースやお菓子を買って、家でだらだら過ごすという生活を規則正しく送っていました
その古本屋は今はもうなくなってしまったのですが、倉庫のような巨大なところに大量の古本がびっしり並んでいるという珍しいところでした
ですので、毎週行っても飽きないくらいの蔵書数でした
基本的には出版社別ではなく、作者名別で並んでいるので、好きな作家を順番にチェックしていくというやり方だったのですが、なぜかその古本屋は早川と東京創元だけは別になっていたのです
ちなみに当時私は貧しい暮らしをしていたので、単行本にはほとんど手を出さず(出せず)に文庫本ばかり買っていました
早川や東京創元は外国人作家のSFとかミステリーばかりで、あまり趣味が合わないと思っていたところに、原寮さんの名前がありました
ハヤカワ文庫でも日本人の作家を出しているのかと感心しながら、そういえばこのミスランキングにも載ってたな、、、と思い、買ったのを覚えています
その他にも数冊くらいは買ったのだと思いますが、何だったかは覚えていません
とにかく原寮さんの小説がとてつもなく面白かったことは覚えています
そして、翌週も原さんの本を一冊だけ買いました
もちろん、全部一気に買ってもいいのですが、週に一度の楽しみをきちんと取っておくために、一冊ずつ買っていきました
ですが、その楽しみは一ヶ月で終わってしまいました
なぜなら、その古本屋には原寮さんの本が五冊しかなかったのです
うーん、仕方がないと思い、私は大きな新刊書店に行くことにしました
当時はスマホなどなく、インターネットもスタンダードではなかったので、足で情報収集するしかありません
そして、私は驚きました
かなり長く作家をされているようなのに、早川から五冊しか出してないことが分かりました
そして、もう当分原寮さんの本を読めないのだと思い、ひどく残念な気持ちで電車で帰ったのを覚えています
それからかなり長い年月が経ち、あるニュースが飛び込んできました
原寮さんの新刊が14年ぶりに出ると聞き、私は興奮しました
もちろん、すでに読んでおります
しかもキンドルです
隔世の感があります
『それまでの明日』は賛否両論あるようでしたが、私から言わせていただければ、なんだっていいのです
原寮さんが書いた沢崎が買ってくるのであれば、それで満足です
そう思わせてくれる作家は、そうそういません
そして、先日、原寮さんの訃報が入りました
私はまたいつか読めるに違いないと信じていました
また十年ぶりとかかもしれませんが、また沢崎に会えると思っていました
でも、そうはなりませんでした
本当に残念です
若かりし頃の私に、小説の中で一つの人間像を与えてくれた作家さんです
心よりご冥福をお祈りいたします
最初に読んだのはこちらでした。ハードボイルドの良さを心から理解できた最初の作品かもしれません。こういう作家の方はもう出てこないかもしれません。私たちにできることはもう再読しかありません