人は短編集をどれくらいのペースで読んでいるのでしょうか
そして、一冊にいくつも入っている短篇を、一日で一気に読むのでしょうか
それとも、一つだけ読んだら後は後日にまわすのでしょうか
後日にまわされた短編小説たちはきちんと読んでもらえるのでしょうか、、、
などなど、興味深いことがたくさんあります
ただ、それらは読者によって違うというのもありますし、読まれる作品や作家によって違うかもしれません
私も数々の短編を読んできましたが、相性によっては全然ダメで、最初の一つを読んだらもう他のものを読む気がしなくなったりします
短篇小説というのは、相性の良し悪しというのが強く出るような気はします
ですので、一気に読める短編に巡り会えたなら、それは本当に幸せと言ってもいいと思います
そういう意味で、『都市伝説セピア』は全ての作品を一気に読むことができる素晴らしい短編集です
ホラーと銘打たれているが、恐怖の感情はあまり湧かないかもしれません
この短編集は5つの作品が収録されていますが、どれも完成度は高いです
せっかくなので、偏愛度ランキングをやってみたいと思います
3位:死者恋
うまく出来ています。会話口調の展開がスリルを増してくれます
ただ、本当に恐いのは幽霊ではないと気付かされます
狂気に満ちた人間の姿よりこわいものはないということでしょうか
2位:昨日公園
最後のオチが読めるかもしれません。でも、この作品にとってそれはどうでもいいことです
仮に時間を戻せたとして、死んだ人間を生き返らせようとしても、やはり生きさせることはできないものなのでしょうか
自由意志とか、そういうことまで考えさせてくれます
1位:月の石
電車から見えるアパートの一室にリストラした社員の姿や亡き母の姿が見えます
そのアパートに行ってみると・・・、というお話です
万博の記憶や母との思い出などが絡み合い、もはやホラーという括りでは失礼かもしれません
あらゆる短編の中でも傑作と言えると思います
その他の2編も文句のつけようのない出来です
どれも、日常生活を忘却してしまうほどのめり込むことができます
ただ一つ残念だと思ったのは、『都市伝説セピア』というタイトルです
万人向けの内容にも関わらず、万人が手に取るタイトルではない気がしました
ちなみにこの本はすでに絶版になっているようです
内容は申し分ないので、もっとタイトルが良ければ、さらに読者層は広がったかもしれません
ただ、昨今はタイトルが良くてもすぐに絶版になりますからね。。。
とはいえ、この作家はたくさん出版してくれているので、今売っていて代表的なものから入ると言うのもアリだと思います
この方は『花まんま (文春文庫)』で直木賞をとっておられます。こちらでしたら、今も売っていますので手軽に入手できます。やはり賞をとった作品は末永く生き残るものなのかもしれません