職業作家への道

自分の文章で生活できるなんて素敵。普通の会社員が全力で小説家を目指します

『アドルフに告ぐ』手塚治虫

 

 

私はあまり漫画を読まないのですが、嫌いだからではありません

 

あまり漫画のことを知らないので、本屋さんに行っても何を読んでいいか分からないという状態になってしまいます

 

とはいえ、日本という国は本当に漫画大国のようで、自国にすぐれた漫画が身近にあるのに読まないのは大きな損失だと私も思います

 

面白い漫画をたくさん読みたいです

 

ただ、漫画の「絵の好き嫌い」というのは思った以上に個人差があるかもしれませんね

 

同じように「文章の好き嫌い」もあるかもしれませんが、それ以上に「絵」の方が個人差は大きいように感じます

 

あまり好みでない絵だと、本当に読む気がしなくなるという話をよく聞きます

 

(もちろん、文章でも整理的に受け付けない、と言われる作家もいます。有名なところでいうと村上春樹氏ですが、私は嫌いではありません)

 

私の少ない漫画読書経験ですが、比較的よく読むのは手塚治虫氏と横山光輝氏のものです

 

ご存じの通り、彼らの絵は現代の漫画家に比べたらやはり古めかしさはあり、お世辞にも上手とは言えないかもしれません

 

現代の美しいグラフィックの最新ゲームをしている人からしたら、スーパーマリオブラザーズを見るようなものかもしれません。

 

ですが、手塚治虫氏の作品もスーパーマリオも、現代でもそれなりに楽しむことができます

 

友人からたまたま借りることになり『アドルフに告ぐ』を読みました


三人のアドルフと峠という日本人を中心に物語は展開されていきます


手塚氏の見事なところは大人数を登場させてそれが相互に絡み合っていくところでしょう。『陽だまりの樹 コミック 文庫版 全8巻完結セット (小学館文庫)』にしてもそういうところがあります


他の漫画家にしても登場人物を多いことはありますが、普通は(ドラゴン〇ールのように)ぶつ切りで強い順に敵が出てくるだけです(もちろん、ドラゴン〇ールにはドラゴン〇ールの良さはありますよ!)


多くの登場人物が様々な形でつながっていることが少し不自然だと思わなくもないですが、それを加味しても『アドルフに告ぐ』は間違いなく傑作です

 

ここに登場する人物(ヒトラーは除くとして)は、誰もが歴史の大きな渦に巻き込まれて、自分の意思とは反するところで生きざるをえません


それによって人格が変わってしまったり、不幸に見舞われたりします


手塚治虫氏の書く人物はどの人間もあまりに不完全なのです


聖人君子みたいな人は決して出てきません。そして、彼ら彼女らの背景を知ると、誰も憎むことはできません

 

冒頭では典型的な悪役のように見える人物も、必ずしもそれで終わりません


そういう人にも家族が居て、苦しい状況があって、と次第に読者は彼ら彼女らの状況を理解しようとしてしまうのです

 

私たちが生きているこの世界も、そういう人がほとんどなのかもしれません。「こんなに嫌な奴がいるとは、、、」と思っていても、実はその生い立ちや環境を知ると、単純に忌み嫌うことはできなくなるものではないでしょうか

 

おそらく、人というのは世の中のことを知れば知るほど、何も言えなくなります(正しいとか、間違っているとか)

 

手塚治虫氏の作品は人間の卑小さを感じさせてくれます


彼の作品は読後に感想を述べるのが難しい作品ばかりかもしれません。救いがないような、努力すれば報われるような。。。でも読者に決して絶望はさせないのです

 

手塚治虫氏は永久的に漫画史に残る作家だと思いますが、理由はやはりこの矛盾に満ちた人間がたくさん出てきて、それがまた魅力的な人物ばかりだからだと感じました

 

アドルフに告ぐ 1

アドルフに告ぐ 1

 

 

何度読んでも面白いので、私もそのうちKindleで購入して、数年に一度くらい読み返すというようなことをしたいですね

 

 

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