周りから強く勧められる本というものがありますが、表題の著作はまさしくそういうケースで読むことになりました
主人公のオーガストはふつうの男の子なのですが、顔に障害があります
とはいっても、多くの人があまり見たことがないくらい、顔の構成が異なっています
なので、初めてオーガストの顔を見た人は、ぎょっとして驚いてしまいます。ひどい場合は大声を上げてしまう人もいます
そのオーガストが五年生のタイミングから学校へ行くことになり、その後一年の生活が書かれるというのが物語の骨子です
私は自分自身ずっと問題だと思っているのですが、障害関係のことをあまり直視せずに私はこれまで生きてきたと感じます
さらに正直に言わせていただくと、「その現実を目の当たりにすると、何と言っていいか分からなくなるから」です
それだけ、私は障害を持っている方との接点が少なかったというのもあるかもしれません
そういう意味でも、このワンダーは私にとって考えさせられることが多かったです
ですが、この本が単なる障害のことのみを書いていたら、平均的な著作になっていたかもしれません
それにはとどまらない物語としての広がりがあるのです
主人公はオーガストですが、視点は何度も切り替わります
視点がオーガストから外れて、彼の友人のものになったり、家族になったり、家族の知人になったり、と
オーガストの周りの視点を何度も変えることにより、よりオーガストの置かれている状況は精緻化されていきます
それと同時に、オーガストだけではなくそれぞれの人たちの人生における葛藤や悩みも描写されていて、次第にオーガストだけが中心人物ではなくなります
そういったテンポのよい視点の切り替わりによって、読者はまた障害というものを過度に深刻に思うのではなく、本当に日常生活にあるシーンなんだと理解させてくれる側面もあるのかもしれません
最後はやや予定調和すぎるきらいはあるかもしれませんが、この本の重要さはその結末などでは全くなく、そこに至る過程だというのは、読んだ人の全てが理解できると思います
そういう意味でもこの本は稀有だと申し上げてもいいかもしれません
実は、私はかつて外国を旅行していたときに一度だけオーガストのような子に会ったことがあります
今でも強く記憶しています。海辺の小さな村でお父さんに抱かれている子供さんでした
まさしくこの本に何度も登場してくる、オーガストの顔を見て驚いて口をつぐんでしまう不特定多数の一人のような態度をしてしまったに違いありません
そして、オーガストのような子は、自分の顔を見て驚いている周りの人たちの反応に極めて敏感だと知りました
その子を見たのはもうかなり前のことですが、今改めて自分の態度を思い返しても絶句してしまいます
この本ではハッピーエンドで終わったオーガストも、この後また新しい環境で人生は続いていく。その場所では、今回と同じように理解してもらえるとは限らないでしょう
読まれた方は、彼のその後の人生のことを、まるで家族の一人のように考えてしまうかもしれません
続編もあります。私はすでに購入済みですので、近いうちに読みたいと思います