前回は、よいタイトルの作品を私が恣意的にとりあげてみました
ですが、タイトルというのは中身と同じく、個人の好き嫌いで大きく評価が変わるもののようです
例えば、皆様が仲の良いお知り合いに、「この小説のタイトルっていいと思わない?」と一度お聞きしてみてください
仲が良ければ良いほど忖度してくれないので、「いやいや、全然そうは思わないんだけど。どっちかというと、ダサくない?」といったような、傷つくカウンターが待っているに違いありません
そして、相手方から「こっちのタイトルの方がいいでしょー」と言われたら「いやいや、人の好みけなしておいて、出してきたのがそれなの?」とでも言いたくなります
ですので、あまりタイトル論争を他の人としない方がいいようにも思います
ちなみに『蛇にピアス』という金原ひとみのすばる文学賞を受賞した作品ですが、最終選考に残った時までは『甘い死臭』というタイトルでした
私はその時の予選通過一覧のタイトル名を見ていた時に、『甘い死臭』というのはいいタイトルだなぁと思った記憶があり覚えていたのですが、なんと受賞してから『蛇にピアス』に改題されていました
ご本人の希望か、出版社からの要請なのかはわかりませんが、皆様はどっちがいいと感じられますでしょうか
いずれにしても、少なくともどちらも誰かしらは良いタイトルと感じたわけなので、双方とも悪いタイトルではないのかもしれません
ちなみにこの二つは良いタイトルを考える上で、必要な要素を双方とも備えているように感じるのですが、皆さんも同感でしょうか
タイトルは基本的に、形容詞+名詞で成り立つことが多いと思います。あとは名詞+名詞というパターンも多いです
他には派生形として形容動詞+名詞や名詞+動詞なども散見されます
例を挙げてみます
形容詞+名詞=>『赤い月』
名詞+名詞=>『小僧の神様』
形容動詞+名詞=>『柔らかな頬』
名詞+動詞=>『けものたちは故郷をめざす』
その他にもたくさんの組み合わせがありますが、上記のパターンの作品が多いように感じます
ここには含めませんでしたが、名詞単体の作品も多いです。『楢山節考』という名詞単体のものですとか『停電の夜に』のように、最後に助詞などがぽろっと付いている場合もあります
名詞単体のタイトルというのはシンプルがゆえに、完全に内容勝負だと思います
最後に助詞などがつく変則型も名詞単体と同じで、内容に依存してタイトルの良し悪しをあまり議論するものでもなさそうです
そういうわけで、タイトルで何か印象を刻みたい場合は、単語と単語の組み合わせで構成するのがオーソドックスなパターンだと考えています
そして、次回はようやく『蛇にピアス』と『甘い死臭』が良いタイトルだと思われる要因に迫っていきます
ちなみに、この著作の中に「タイトルを魅力的にする」という内容が数ページ程度あります。あくまで私個人としては、外国人の方とは感じ方が違うのかな、、、という気もしましたが、前述したように、日本人同士でもタイトルの甲乙については、異なる意見になることが多いというだけかもしれません