本日ご紹介するのは『本の読み方 スロー・リーディングの実践』です
平野啓一郎がこの本の著者なのですが、やはりこの人はいつも読者に新しい発見を与えてくれます
これまで国語の授業を含め、大人たちや書評家が口をすっぱくして言ってきたのは
たくさんの本を読めということでした
私も幼少の頃から言われてきた記憶があります
どんな本でもいい。とにかくたくさんの本を読め、と
意味が分からなくてもいいから、とりあえず最後まで読むことに意義がある、と言われてげんなりしたことがある人も多いのではないでしょうか
私も同じです
その呪文を長いことかなり真面目に信じて実践してきたように思います
ですが、平野啓一郎はそれに異を唱えます
速読のようなものや、ただ数多く本を読んで後から何も思い出せないようではほとんど意味のない読書体験だと、辛辣なことを言います
とりわけ小説の類は正解があるわけでもなく知識を吸収させようとするわけでもないのだから、ゆっくり味わって読み、様々な解釈をしてみることが本の楽しみ方ではなかろうか、と
確かにその通りです
スローフードが食を心から楽しむ方法であれば、スローリーディングは心から読書を楽しむ方法ではなかろうか、と平野啓一郎は指摘します
実際、私も物語中盤を過ぎる頃には咀嚼ができなくなり先を急ぐ傾向があります
特にストーリーが面白いと、深く考えることなく字面だけを追ってしまいます
ひどい場合は斜めに飛ばし読みしてしまったりします
これまで、少しでもたくさんの読書をしようとするあまり、見落としてしまったことが実に多くあったのかもしれないと思いました
このブログでも本の感想を書いていますが、自分がきちんと読めているのかなとやや自虐的になってしまいます
とはいえ、自分には自分の読書スタイルがあり、頭では分かっていてもそれを容易に変えることはできません
斜め読みでもいいと判断したのであれば、無理やりゆっくり付き合うこともないのかもしれません
無理のない読書が一番だ、と勝手に結論付けています
とはいえ、それではこの本を読んだ意味がなくなってしまいます
なので、今後のスタイルとしては、読書は質より量ではないんだ、という考え方をベースにしていきたいと思いました
例えば、読書界でも、「あの本を読んでないなんて読書家とは言えないな」のような風潮が散見されます
マイナーな本を知っていれば、尊敬される風潮も少なからずあります
読んだ本の数がめっぽう少なくても、数冊の本をとてつもなく精読している人がいれば、そういう人はとにかく大量の読んでいる人よりも、見えてることが多いこともあるかもしれません
私もついつい読書については背伸びをしてしまうことがありますが、きちんと反省させてくれる良書でした