職業作家への道

自分の文章で生活できるなんて素敵。普通の会社員が全力で小説家を目指します

『一人称単数』村上春樹

 

 

この四連休、皆さんはどのようにお過ごしになられたでしょうか 

 

私は本屋さんに行って、久しぶりにじっくりと書棚を眺めてみました

 

最近、Kindleの本ばかり買っているので、あまり紙の本を触ることがなくなりました

 

両方とも売っている場合、どちらを買えばいいのか迷う経験が、多くの人にあるかもしれません

 

本というのは基本的に重いものです

 

そして、お気に入りだからとはいえ、同じ本をそれほど頻繁に読むわけでもなく、長期間置いているとカビが付いたりシミができたりして、厄介なことになります

 

それでも、私は久しぶりに出た村上春樹の短編集を紙の本で買ってしまいました

 

しかも、本よりKindle版の方が安いにも関わらず・・・

 

私は若いころからずっと彼の愛読者でした

 

長編小説でも好きなものはたくさんありますが、たまにもしかしたら彼の短編の方が好きかもしれないと思うことがあります

 

新作の『一人称単数』は、これまでの短編とは少し毛色が違っていると感じました

 

単なる散文ではない形式、つまり短歌だとか詩だとか、太字による雑誌の挿入など

 

ある意味においては実験的で、村上春樹に詳しければ詳しいほど楽しめる内容なのかもしれません

 

私はファンであるものの作品しか読んでおらず、作家本人について熟知しているわけではないので、きちんと理解できていない部分があるかもしれません

 

この短編全てには「ある物語や出来事には意味も教訓もなく、ただそこにあっただけ」ということが通底しているようです

 

 

物語の起伏に富んでいるわけではないので、次々ページをめくるような吸引力はないものの、少し変わった話なのに不自然さを感じさせないところは、あいかわらずの力量です

 

そして私が強く感じたのは、村上春樹も老いてきていて、自分の思い出を大切にし始めているということです

 

デビュー当時からと変わらず、20前後の僕の話を書いているのですが、自分がすでに老齢の域に達していることに極めて自覚的です

 

そして多くの老齢の方が感じるように、自分としては妙に生々しく残っている記憶が、果たして本当にあったことなのか、著者自身も信じがたい気持ちになっていることがよく分かります

 

村上春樹のファンであれば、既視感とちょっとした新しさで、楽しめるに違いありません

 

ちなみに、私がこの中で一番好きなのは、「ウィズ・ザ・ビートルズ」で次が「謝肉祭」です

 

村上春樹の小説を読みながら、村上春樹の過去の作品を思い出す。それを読んでいた頃の自分を思い出すような体験でした

 

音楽だったら、そういうことはよくあります。当時流行っていた曲を聴くと、その時の場所だったり人を思い出します。が、小説ではめったにありません

 

かつて私がうなった、レーダーホーゼンや中国行きのスロウボートなどを彷彿とさせる作品がいくつもありました

 

もちろん、あの頃の作品とはもう似て非なるものです。ですが、村上春樹は70を超えても変わりませんでした

 

一日でも長く生きてほしいものです。マラソンとかしているし、健康にも気を使っているようなので、長寿だとは信じているのですが

 

一人称単数 (文春e-book)

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